【現代文】小説の解き方のコツを解説!感情を推測してはいけない

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現代文の小説では、
「登場人物の感情を推測しろ」
というアドバイスをよく耳にしますね。
実際、問題文にも「このときの主人公の心情はどんなものか」という問いがたくさん出てきます。
だから小説問題を解くときには、「登場人物の感情」をしっかり推測しようと必死になってることでしょう。
ところが、大学入試の小説問題で点を取りたいのであれば、
登場人物の感情を
推測してはいけません。
というわけでこのページでは、小説問題の解き方のコツについて解説していきます。
要点は、
- 事態
- 心理
- 行動
の流れを意識すること。
それでは本題へ移りましょう。
Contents
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小説では登場人物の感情は推測するな!
小説問題は、感情移入した瞬間に減点される!
冒頭から「登場人物の感情を推測するな」と書いたので驚いたかもしれません。
ところがこれは、大学入試の作り方を考えれば当然のことです。
感情の捉え方は人それぞれ
たとえば、「Aさんは笑った」という文章があったとき、Aさんはどんな感情を抱いているのでしょう。
普通に考えれば、「楽しい」とか「面白い」とか思っているような気がします。
だけども、必ずしもそうとは限りません。
なにか嫌なことがあって、どうしようもなくなり「笑うしかなかった」のかもしれません。
友だちに図星を突かれて、「笑ってごまかした」のかもしれません。
あまりの怒りに、乾いた声で「笑った」のかもしれません。
「笑った」と書いてあっても、どういう感情で「笑った」のかは、人によって捉え方が違うのです。
どうあがいても「感情」は問題にできない
じゃあ、「笑った」の前後の文章を読み取って、どんな感情か推測すればいいんじゃない?
と思うかもしれません。
ところがこれもNG。
たとえば以下の文章を読んでみてください。
彼は、80点というテストの点数を褒められた、思わず笑った。
このときの彼は、どんな感情を抱いているのでしょう。
文面を素直に受け取れば、褒められて「嬉しい」から笑ったように見えます。
でも実際は、「普段は満点を取っているのに、今回は80点で悔しかったところ」を褒められて、「ああ、この人、自分のことを分かってないんだな」と「呆れて」笑っちゃったのかもしれません。
このように、いくら前後の文章を読み取ったとしても、登場人物の感情を正確に読み取るなんて不可能なのです。
本文に書いてあること以上の感情なんて、正しく推測できるはずがないのです。
そんな「人によって異なった推測」になるものなんて、大学入試のような試験に出せるわけがありません。
大学入試は、「誰であろうが、解説を聞けば、満場一致で納得する」ような問題しか出しません。
推測しないといけないような問題なんて、クレームの嵐になるわけです。
そんな問題、問題作成側も怖くて作れるはずありませんよね。
- 登場人物の感情を推測してはいけない
- 人によって感情の捉え方は大きく変わる
- 前後の文脈を読み取ったとしても、「感情」そのものは正しく推測できない
- 大学入試では「感情を推測させる問題」は100%出ない
小説の「心情問題」を解くコツ
「心情問題」は、「心情」を聞いているわけじゃない!
とはいっても実際の入試問題では、
▲平成28年度センター試験本試より抜粋
のように、「登場人物の心情」を問う問題が出てきます。
実はこの「心情問題」、聞いているのは「心情」ではありません。
聞いているのは、「その心情の前後で、どんなことが起こったのか」。
大事なことなので繰り返します。
「心情問題」は、「文脈把握問題」なのです。
ここでチェックすべきポイントは、
- 事態
- 心理
- 行動
の3つです。
「事態→心理→行動」の流れを把握する
小説の登場人物が「笑った」のであれば、
- 直前に「笑った原因(=事態)」があって
- その原因によって、何かしらの心理状態になり
- その結果、「笑った」という行動が起こっているはずです。
どんな小説であっても、どんな描写であっても、そこには
「事態→心理→行動」
という流れが存在します。
上に挙げた例題を見てみましょう。
該当する本文は、以下の赤枠部分になります。
上に載せた3枚の画像だけで、この問題は解き切れます。
ぜひとも挑戦してから、以下を読み進めてください。
問題文には、
本文1行目から30行目までで、闇で買った座席に着くまでの私の様子が描かれているが、そのときの心情の説明として最も適当なものを選べ
と書かれています。
「どんな心情か」を聞いているように見えますね。
しかし何度も述べている通り、「心情を推測させるような問題」は100%出題されません。
それでは一体、何をどう考えればいいのか。
「心理」以外の「事態」、「行動」を見つける
ここで出てくるのが、
- 事態
- 心理
- 行動
の流れです。
「どういう心理か」を聞いている問題ですが、本文に「心理」そのものが書かれることは滅多にありません。
そして「心理」を推測させることも100%ありません。
このような「心情問題」は、
- 「どういう心理か」を聞いているように見えて、
- 実際に聞いているのは「心理」ではなく、
- その「心理」の前後にある文脈、
- つまり「事態」と「行動」
を聞いているのです。
もう一度書きますね。
「心情問題」で問われているのは、
「心理」の前後の「事態」と「行動」です。
これを理解していれば、ほぼ機械的に選択肢を絞っていくことができます。
「どんな心情か」なんて考える必要もありません。
具体的には、
- 選択肢の「心理部分」を消す
- 本文から「事態」と「行動」を見つける
- 本文に直接書いてある「心理部分」を正誤判定に使う
という3ステップで、心情問題の正解を一本釣りすることができます。
ステップ①:選択肢の「心理部分」を消す
まずは選択肢の「余計な心理」を削除しよう!
本文を読む前に、問題の選択肢を確認しておきます。
選択肢を抜き出しておきます。
- 闇で座席を買ったことをうしろめたく思いながらも、その座席が他の乗客と同じ金額であったことや、混雑した車中で座っていられることに安堵している。
- 見知らぬ男に声をかけられてためらいながらも、座席を売ってもらったことや、前に座っているのが年配の女性であることに安心している。
- 闇で座席を買わされたことを耐えがたく思いながらも、座席を買えたことや、自分と同じ方法で座席を買った人が他にもいることで気が楽になっている。
- 闇で座席を買ってしまったことに罪の意識を感じながらも、前に座っている女性と親しくなって、長い道中を共に過ごせることに満足している。
- 闇で座席を買ったことを恥ずかしく思いながらも、満員の急行列車の中で座っていられることや、次の仕事の準備ができることにほっとしている。
この5つの選択肢から、正解をひとつ選ぶ問題です。
さて。
普通なら本文を読みながら、選択肢の正誤をチェックしていきますね。
しかし実は本文を読まなくても、「選択肢から余計な文言を削ること」ができるのです。
選択肢の「心理部分」はすぐに削除できる
上で何度も述べてきた通り、「心情問題」では「心理」は聞かれていません。
本文に直接書かれていない限り、登場人物の心理は知ることはできません。
選択肢の「心理部分」は、正誤判定として実に「あいまい」な材料なのです。
つまり以下の赤線部分。
選択肢内の「心理部分」である、
- 闇で座席を買ったことをうしろめたく思いながらも、その座席が他の乗客と同じ金額であったことや、混雑した車中で座っていられることに安堵している。
- 見知らぬ男に声をかけられてためらいながらも、座席を売ってもらったことや、前に座っているのが年配の女性であることに安心している。
- 闇で座席を買わされたことを耐えがたく思いながらも、座席を買えたことや、自分と同じ方法で座席を買った人が他にもいることで気が楽になっている。
- 闇で座席を買ってしまったことに罪の意識を感じながらも、前に座っている女性と親しくなって、長い道中を共に過ごせることに満足している。
- 闇で座席を買ったことを恥ずかしく思いながらも、満員の急行列車の中で座っていられることや、次の仕事の準備ができることにほっとしている。
の赤文字部分では、選択肢を絞ることはできないのです。
選択肢の心理部分を抜くと、ようするにこの問題は、
- 闇で座席を買った。その座席が他の乗客と同じ金額だった。混雑した車中で座っていられる。
- 見知らぬ男に声をかけられた。座席を売ってもらった。前に座っているのが年配の女性。
- 闇で座席を買わされた。座席を買えた。自分と同じ方法で座席を買った人が他にもいる。
- 闇で座席を買ってしまった。前に座っている女性と親しくなった。長い道中を共に過ごせる。
- 闇で座席を買った。満員の急行列車の中で座っていられる。次の仕事の準備ができる。
という「事態」、「行動」だけで正誤を判断すれば良いことになります。
ステップ②:本文から「事態」と「行動」を見つける
本文から、「実際に起ったこと」を読み解こう!
それでは、本文を見てみましょう。
本文を読めば、
④闇で座席を買ってしまった。前に座っている女性と親しくなった。長い道中を共に過ごせる。
→「長い道中」とも書かれていないし、「(女性と)共に過ごせる」とも書いていない。
⑤闇で座席を買った。満員の急行列車の中で座っていられる。次の仕事の準備ができる。
→「次の仕事の準備ができる」なんて書いていない。
の2つがすぐに間違いだと分かります。
また、
③闇で座席を買わされた。座席を買えた。自分と同じ方法で座席を買った人が他にもいる。
→「買わされた」は不適切な表現。明らかに「自分の意思」で買っている。
という理由から、③も間違いだと分かります。
残る選択肢は、
①闇で座席を買った。その座席が他の乗客と同じ金額だった。混雑した車中で座っていられる。
②見知らぬ男に声をかけられた。座席を売ってもらった。前に座っているのが年配の女性。
の2つ。
この2つは困ったことに、どちらも間違ったことは言っていませんね。
いずれの材料も本文に書いてあることなので、これ以上削ることができません。
ステップ③:本文に直接書いてある「心理部分」を正誤判定に使う
「事態」と「行動」で判断できなかったら、最後に「心理」を直接見つけ出そう!
こういうときは仕方ないので、選択肢を元の形に戻して考えてみましょう。
①闇で座席を買ったことをうしろめたく思いながらも、その座席が他の乗客と同じ金額であったことや、混雑した車中で座っていられることに安堵している。
②見知らぬ男に声をかけられてためらいながらも、座席を売ってもらったことや、前に座っているのが年配の女性であることに安心している。
「事態」と「行動」で正誤判定ができないのなら、残りの「心理」で判断するしかありません。
ここで注意です。
「心理」で判断するといっても、「心理」を推測してはなりません。
「心理」で判断する場合は、本文に直接書いてある「心理部分」のみを使うこと。
逆にいえば、
本文に直接書いてある「心理部分」は、選択肢の正誤判定に使える
ということです。
本文から「直接書いてある心理部分」を見つけ出す
それでは実際に、本文の「直接書いてある心理部分」を確認しましょう。
直接心理が書かれているのは、上の赤線の部分です。
順番に確認すると、
- 心得たふうに
- 内心ほっと
- 照れながら
- (再び)ほっと
- 安心したようになって
の5箇所になりますね。
それぞれの「心理」は、どんな「事態」が原因でしょう。
あらためて本文を読んでみると
- 心得たふうに→「男との応対」に対して
- 内心ほっと→「男との応対」に対して
- 照れながら→「坐席にいた男と入れかわったこと」に対して
- (再び)ほっと→「坐席にいた男と入れかわったこと」に対して
- 安心したようになって→「坐席の金額が同じだと言われたこと」に対して
と、それぞれの原因となる「事態」が分かります。
あらためて残りの選択肢を確認しましょう。
①闇で座席を買ったことをうしろめたく思いながらも、その座席が他の乗客と同じ金額であったことや、混雑した車中で座っていられることに安堵している。
②見知らぬ男に声をかけられてためらいながらも、座席を売ってもらったことや、前に座っているのが年配の女性であることに安心している。
①の「うしろめたく思いながら」と、②の「ためらいながら」は、どちらも本文に直接書かれていません。
実際、「うしろめたく思っていた」のかもしれませんし、「ためらっていた」のかもしれませんが、どちらの推測の域を脱しません。
よって、この2箇所で正誤を判定することは不可能です。
つまり
①闇で座席を買ったことをうしろめたく思いながらも、その座席が他の乗客と同じ金額であったことや、混雑した車中で座っていられることに安堵している。
②見知らぬ男に声をかけられてためらいながらも、座席を売ってもらったことや、前に座っているのが年配の女性であることに安心している。
の2箇所で決着をつけることになります。
①は何に「安堵している」のでしょうか。
- 座席が他の乗客と同じ金額だったこと
- 混雑した車中で座っていられること
に安堵しているんですね。
これは、
- 心得たふうに→「男との応対」に対して
- 内心ほっと→「男との応対」に対して
- 照れながら→「坐席にいた男と入れかわったこと」に対して
- (再び)ほっと→「坐席にいた男と入れかわったこと」に対して
- 安心したようになって→「坐席の金額が同じだと言われたこと」に対して
の2箇所に直接書かれています。
一方の②は、
- 座席を売ってもらったこと
- 前に座っているのが年配の女性であること
に「安心している」のです。
「座席を売ってもらったことに安心している」ということは、
- 心得たふうに→「男との応対」に対して
- 内心ほっと→「男との応対」に対して
- 照れながら→「坐席にいた男と入れかわったこと」に対して
- (再び)ほっと→「坐席にいた男と入れかわったこと」に対して
- 安心したようになって→「坐席の金額が同じだと言われたこと」に対して
で確かに直接書いてあります。
ところが、「前に座っているのが年配の女性であることに安心している」ということは、
- 心得たふうに→「男との応対」に対して
- 内心ほっと→「男との応対」に対して
- 照れながら→「坐席にいた男と入れかわったこと」に対して
- (再び)ほっと→「坐席にいた男と入れかわったこと」に対して
- 安心したようになって→「坐席の金額が同じだと言われたこと」に対して
のどれにも当てはまりません。
もしかしたら、本当に「前に座っているのが年配の女性であることに安心している」のかもしれませんが、本文に直接書かれていないので、「推測の域」を脱しません。
つまり、ここで正誤判定を出すことは不可能。
「正解」と決めつけることはできません。
というわけで、
- 闇で座席を買ったことをうしろめたく思いながらも、その座席が他の乗客と同じ金額であったことや、混雑した車中で座っていられることに安堵している。
- 見知らぬ男に声をかけられてためらいながらも、座席を売ってもらったことや、前に座っているのが年配の女性であることに安心している。
- 闇で座席を買わされたことを耐えがたく思いながらも、座席を買えたことや、自分と同じ方法で座席を買った人が他にもいることで気が楽になっている。
- 闇で座席を買ってしまったことに罪の意識を感じながらも、前に座っている女性と親しくなって、長い道中を共に過ごせることに満足している。
- 闇で座席を買ったことを恥ずかしく思いながらも、満員の急行列車の中で座っていられることや、次の仕事の準備ができることにほっとしている。
の中からもっとも当てはまるものを選ぶと、
①闇で座席を買ったことをうしろめたく思いながらも、その座席が他の乗客と同じ金額であったことや、混雑した車中で座っていられることに安堵している。
になります。
このように現代文の小説、特に「心情問題」は、ほぼ機械的に正解を導き出すことができます。
登場人物の心理を推測してしまっては、最後の最後で正誤判定をミスることになるでしょう。
これが小説問題の罠。
へたに感情移入してしまうと、かえって正答率がガクッと下がります。
小説はあくまでも無感情で、機械的に解くように。
最後に
最後に今回の要点をまとめておきます!
- 登場人物の感情を推測してはいけない
- 人によって感情の捉え方は大きく変わる
- 前後の文脈を読み取ったとしても、「感情」そのものは正しく推測できない
- 大学入試では「感情を推測させる問題」は100%出ない
- 事態
- 心理
- 行動
- 選択肢の「心理部分」を消す
- 本文から「事態」と「行動」を見つける
- 本文に直接書いてある「心理部分」を正誤判定に使う